謎だらけ!浜松銘菓の春華堂「うなぎパイ」
うなぎパイ工場で秘密を解き明かしてきた
みなさんどうもこんにちは。miteco編集部の山口です。
突然ですが、浜松の銘菓といえばなんでしょう・・・?
「うなぎパイ」じゃないですか?
浜松どころか、静岡を代表するお土産物といっても差し支えないかもしれません。たとえば「お土産お菓子 全国認知度ランキング」では、知名度73%越えで全国2位※。全国的にもとにかく有名なんです。
※出典:2017年4月「お土産お菓子に関する調査」株式会社ネオマーケティング
でもうなぎパイは、キャッチフレーズやテーマソングなど謎が多い印象も・・・。うなぎパイのキャッチコピーを使ったポスターはなんか、
画像提供:有限会社春華堂
変。
そして、うなぎパイのテーマソング。
うなーぎ パイパーイパーイ♪
めちゃくちゃ頭に残るのでテーマソングとしてはものすごく役割を果たしてるし、作詞作曲は小椋佳さんということもあって、いい曲なのは間違いない。ないけど、この違和感はなんだ。ニコニコ動画なら「才能のムダづかい」ってタグが絶対ついてるレベル。
個人的には長年変わっていないパッケージも気になるところで、これはいよいよ直接聞いてみるしか・・・。
ということで、今回訪れたのは浜松市西区にある「うなぎパイファクトリー」。うなぎパイ工場を見学しながら、味はもちろん商品の秘密にもグッと迫れるそうです。ここならどんなことでも疑問に答えてくれるすごい人がいるはず。
※ちなみに本記事は、アルバイトタイムスさんが運営する「DOMO+」「いいとこ静岡」とのコラボ記事。DOMO+では「うなぎパイカフェ」などを、いいとこ静岡では「工場見学ツアー」を紹介しました。併せて読んでみてください!
うなぎパイの誕生は56年前!?職人が技術を継承し続ける
うなぎパイファクトリーは、浜松西インターからおよそ20分もあれば余裕を持って到着できます。
駐車場から目の前にある大きな建物へと向かうと、上の写真にあるような壁が登場し、
そんなデケェうなぎパイがあるか! とツッこみたくなるモニュメントがあり、
・・・君は? と問いかけたくなるマスコットキャラクターが3輪車で出迎え、春華堂の謎を増やしてくれたうえで、
入り口に到着します。さっそく、取材の旨を伝えて「詳しい人」をお待ちしていると、コンシェルジュカウンターから美人のお姉さん登場。
こちらが本日、うなぎパイについてあれこれと教えてくれる山本さんです。
山口 |
今日はうなぎパイのいろいろについてお伺いするために来ました。よろしくお願いします! |
山本 |
はい。どんどん聞いてくださいね! ・・・でもせっかくなので、工場を一緒に見学しながら質問にお答えさせてもらうというのはいかがですか? |
山口 |
え? いいんですか!? |
山本 |
はい! もちろん。 |
春華堂さんの粋な計らいで、工場見学しながらお話を伺えることに。
ちなみにうなぎパイファクトリーの見学は基本無料。解説も無料。ついでに駐車料金も無料。そのうえ、見学が終わると工場見学記念品として、うなぎパイが無料でもらえる。
春華堂、太っ腹すぎる・・・。
※コンシェルジュ付きのツアーは要予約なので注意です。
山本 |
うなぎパイはいまから56年前に誕生しました。そして、当時の製法をほとんど変更することなく作り続けているんです。
いまでは袋詰めや出荷に関する部分を機械に任せているのですが、うなぎパイを作る作業は、多くの部分を手作業で進めているのが特徴です。 |
山口 |
56年・・・ほえぇ・・・。しかも手づくりなんですね! |
山本 |
そうなんです。これだけの数を生産するお菓子なのでびっくりなさる方が多いんですが、小麦粉とバターをはじめとした材料を混ぜこね、パイの形にしていく作業は全部人の手でこなしているんですよ。 |
山口 |
ちなみに1日でどれくらいの量が生産されているんですか? |
山本 |
時期によっても差はあるんですが、この工場では1日におよそ20万本が生産されています。 |
うなぎパイファクトリーは生地を焼き上げるラインが6つ。それぞれ違う種類のうなぎパイを作っているのですが、これを全部合わせると20万本になるとのことです。
さらに浜松市内にはあと2つの工場があるそうで、これらの生地を人の手で作るというのは半端じゃない作業だ・・・!
山口 |
20万本って・・・。想像もつかない数字なんですが、手作業で作れるもんなんですか・・・? |
山本 |
そうですね。でもたくさんの方が食べてくださっているからですよね。うなぎパイ職人は毎日約6キロの生地の塊を1日600個、多いときは900個を手で伸ばしているんです。 |
山口 |
しょ、職人・・・!? |
山本 |
はい。春華堂のうなぎパイづくりは、50年以上守ってきた味や作り方を次世代につなげていくための制度として2014年に「師範制度」というのを導入しました。
現在57名いる職人はそれぞれの能力に応じて「練士、範士、宗家、師範」という4段階に分かれているんです。 |
山口 |
うなぎパイ職人の道は険しい・・・。 |
ちなみに現在の師範である野末さんは、うなぎパイ職人としての誇りがあふれ出ている方として社内でも有名。
そのこだわりは完全防備の白衣を着用したうえで、異物混入を防ぐために自らの毛を剃りあげているほど・・・。この白衣は特別製で内側に6か所もゴム止めがあって、ズボンだって2重構造で毛が落ちないようにしてあるんですよ。それだけでなく、自らにも目を向けるとは・・・。
なお、ファクトリーの外で三輪車にまたがっているキャラクターは「うなくん」という名前の男の子でした。うなぎパイ職人の見習いという設定ですが、頭がツルツルなのはこの師範にあやかってのことなんだとか・・・。意識高いな。
意味深なキャッチコピーとパッケージは逆転の発想から生まれた
山本 |
こちらは、袋詰めにされたうなぎパイを箱に収めてパッケージをつける機械です。あの特徴的なパッケージがここで貼られていくわけですねえ。 |
山口 |
(工場っぽい話に戻ってきた)・・・あ! そうだ。今日は「うなぎパイのあれこれ気になるところ」を聞こうと思って来たのですが、質問をしていってもいいですか? |
山本 |
もちろんです。なんでしょう? |
山口 |
そのパッケージなんですが、昔からずっと同じものなんですか? 記憶にある限りあまり変わっていないような・・・。 |
山本 |
じつは発売当初は、浜名湖や静岡をイメージした青いパッケージだったそうなんですが、そこから間もなくしたときに、あることがきっかけでいまのような白系のベースにえんじ色の文字。もしくはその逆の配色(えんじの地に白字)となったんです。
・・・山口さん、うなぎパイのキャッチフレーズはご存じですよね? |
山口 |
ええ、もちろん。「夜のお菓子」ですよね? |
山本 |
ありがとうございます。このキャッチフレーズはもともと「一家だんらんの時間を過ごすときに、うなぎパイを」というイメージでつけられたものだったんですが、発売当初そっちではない方向に解釈されちゃいまして・・・。 |
山口 |
「うなぎ」ですもんね・・・。元気が出そうです。 |
山本 |
そうなんです(笑)当時の開発者や社長はそれを逆手にとろうと発想しまして、うなぎパイのパッケージを当時の栄養ドリンクに使われていたカラーに変えたんです。するとどうしたことか、物珍しさも手伝って売り上げも増大し、軌道に乗りはじめたというわけで、それ以降このカラーを変更することはなくなったんです。 |
山口 |
勘違いをもとに事実にしちゃったって漫画みたい・・・。あと印象深いものでいうと、うなぎパイのテーマソングも気になってて・・・。作詞作曲って、あの小椋佳さんですよね? |
山本 |
はい。正真正銘、あの小椋佳さんです。春華堂と小椋佳さんとのつながりは、小椋さんが銀行員だったころ※、浜松支店長を任されていたことがあり、そのときの縁からともいわれています。
なんでも、あのCMソング『うなぎのじゅもん』は、小倉さん自身が弊社へ「こんな歌を作ったのだけど」という形で提供いただいたなんていう経緯もあるみたいです。 |
山口 |
まじか・・・。なんというか「独特な歌詞だな」とは思っていたのですが、あれは小椋さんのセンスだったわけですね。でも、たしかに覚えやすい。踊りもついていて、ローカルっぽいなあと感じます。 |
山本 |
このファクトリーではもちろん、春華堂が主体となるようなイベントではお子様と一緒に踊りますし、海外でもこの歌と踊りは人気なんですよ。 |
なんと、あの踊りは海外進出してた。春華堂の社員さんも踊りを覚える取り組みを始めているとのことで、近いうちに全社員が踊れることが目標みたいです。・・・シュール。
※小椋さんが銀行員だったころ:小椋佳さんは銀行員としてアーティスト活動を始めたことで知られています。このとき春華堂は同銀行との取引が盛んだったため縁がつながったとのこと。
地元とのかかわりを大切にしていく老舗企業のプライド
工場を案内してもらいながら質問をしていくと、矢継ぎ早に疑問が解決されていった今回の取材。いよいよ最後の疑問について聞いてみます。
山口 |
うなぎパイにまつわる疑問の最後になるんですが、「うなぎパイって県内のどこでも買えるの?」というのがありまして。というのも、浜松だけでなく県内の駅なら大体置いてあるようなイメージがあるので、地元の銘菓だからこそ意識なさっていることなのかなあと。 |
山本 |
あーなるほど。たしかに県内のJR駅や高速道路のサービスエリアであれば、ほとんどの箇所でうなぎパイをご購入いただくことはできるかと思います。ただ、春華堂が運営している直営店でしか手に入らないうなぎパイもあるんですよ。 |
うなぎパイは現在、「うなぎパイ」「うなぎパイナッツ入り」「うなぎパイミニ」「うなぎパイ V.S.O.P」の4種を販売中。ファクトリーでは全部入った詰め合わせも購入可能です。
山口 |
通販でも取り扱ってない・・・? |
山本 |
パイがとてもデリケートでして通信販売はおこなっておりません。なので、空港や駅、SAといった場所以外では、春華堂の直営店でご購入いただくことになります。この直営店は、浜松市内にしかないのですが・・・。 |
山口 |
市内のみ! こういってはなんなんですが、もっと拡大したらいいんじゃないかとも思ってしまいます。 |
山本 |
いえ、うなぎパイの原点は浜松ですから、ここに根を張ってというのは春華堂の精神です。 |
山口 |
老舗の銘菓だからこそ染みる言葉・・・! それでは今後も浜松を軸に展開するんでしょうか? |
山本 |
そうですね。創業から長いとはいえ、まだまだチャレンジを繰り返していくことが大切だと思って活動しています。
最近では、うなぎパイだけでなく浜松の素材を利用したお菓子づくりをしたり、「スイーツコミュニティ nicoe」をオープンしたりと、地元のみなさんが楽しめる場所、時間を提供するということにも挑戦しています。
そうやって、地域に貢献していくことに少しでも春華堂の魅力が活かせれば、というのが想いですね。 |
近年、春華堂ではうなぎパイ以外のブランドも、ということで商品開発にも注力。そうやって登場したひとつが写真の「すっぽんパイ」。これがうなぎパイとは真逆の味でちょっと酸っぱいスナック菓子です。
なんでも、浜松は日本のすっぽん養殖の元祖といわれる企業がある場所らしく、その企業とのコラボで実際にすっぽんを仕入れて作っているんだとか。そう考えるとお菓子って、地域の魅力を紹介するのにとても適したものなのかもしれません。
また春華堂は年間に68万人が訪れるうなぎパイファクトリーや2014年に新しくできたnicoe、今年の9月30日に期間限定でオープンしたばかりの「春華堂 POP UP STORE KANDA」など、「地元のお菓子屋さん」として浜松への貢献をしています。
地元愛が強い企業だからこそ、地元の素材を使って地元にお店を作る。うなぎパイのちょっと突っ込みどころに困るくらいの疑問からスタートして、地元愛の深さを知る着地を決めた今回の取材。個人的には大満足です。
みなさんも、たまには一家だんらんの夜をうなぎパイとともに過ごしてみてはいかがでしょう?
「DOMO+」「いいとこ静岡」コラボ中!
DOMO+:春華堂のアレンジスイーツ+知られざる逸品がウマすぎる・・・!! 工場見学の帰りはうなぎパイカフェとガーデンへ
いいとこ静岡:大人も子どもも心がワクワク! うなぎパイファクトリーの「スマイルツアー」で楽しく工場見学をしよう