老舗製茶問屋がもてなす和カフェ「茶楽」
茶処静岡から届ける本当のお茶の味
カフェ好きライターが気まぐれでゆくカフェめぐり、今回は「茶」に特化した和カフェに行ってきました。
生産量日本一を誇る静岡だけあって、茶問屋が営む“茶カフェ”というジャンルが増えてきた昨今。なかでも2005年、東海道興津宿の旧国道沿いにオープンした「和CAFE 茶楽」は、ひょっとするとパイオニア的な存在かもしれません。
普段、ペットボトルでもなにげなく口にしている日本茶。本当の意味でお茶を楽しむってどんなことなのか、伺ってみました。
茶楽による“茶当てクイズ”に挑戦!
茶楽を営むのは、1925年創業の老舗茶問屋・山梨商店。3代目当主である山梨晴正さんが全体を担っています。
村松 |
茶楽では、どのようなお茶を楽しめるのですか? |
山梨 |
山梨商店として仕入れているもののなかから、時期によって選んでお出ししています。清水の両河内や静岡の本山といった山の銘茶から、森町、初倉、掛川をはじめとする深蒸し茶などです。 |
山梨商店のお茶は茶楽でも販売している。
村松 |
そういえば、コチラで「闘茶体験」なるものを提供されているとお聞きしました。闘茶とはいったい……。 |
山梨 |
クイズ形式でお茶の味を飲み比べて、勝敗を競うゲームですよ。その歴史は古く、鎌倉時代からある貴族の遊びと伝わっています。
いま諸外国で日本茶が注目されているので、外国人の方にも来てもらえるといいなと思って始めました。あとは地元の方が県外のお客さんを連れてきたり、地元の子ども達が夏休みの自由研究に使ってくれたり。 |
村松 |
サンプルは深蒸し煎茶と山のお茶、品種茶の「香寿」、抹茶入り玄米茶、ほうじ茶の5種類ですね。静岡茶ってこんなふうに分けられるのか、知らなかった。 |
山梨 |
もちろんもっと細分化はできますが、大きく分けてこの5つです。 |
実際の体験ではそれぞれ、プロ仕様の拝見茶碗で淹れて飲み比べるようですが、茶葉の状態で私も一つひとつ香りを嗅いでみました。
村松 |
(くんくん。香りに特徴のある香寿や玄米茶はすぐわかりそう。ほうじ茶も抽出されれば判別できそうだ。難しいのは深蒸し煎茶と山のお茶かなあ……) |
山梨 |
ただこれは初級編なので、中級編、上級編とランクがあがるに従って難しくなります。 |
案内パンフレットによると、中級編では深蒸し煎茶と山のお茶の産地まで鑑定。上級編ではブレンド茶5種の配合まで鑑定するのだとか(!)。ううむ……さすがにそれは難しいぞ。
闘茶体験の様子。ホームページから申し込める。料金は税込で1,620円。 画像提供:山梨商店
判断材料も色や香味、茶葉の形状から渋味といった要素までさまざま。これを体験しただけでもお茶の奥深さを実感できる気がします。
山梨さんはお茶のプロが競う「全国茶審査技術競技会(闘茶会)」第29回において、静岡県代表として出場し、段位を取得した実績のある方。
そんな山梨さんのお茶解説のもとで、闘茶は楽しく進行していきます。お茶名人を目指してぜひ参加してみましょう!
絶品「茶スイーツ」でひと休み
さて、闘茶からカフェのほうへ話を戻します。
天竜杉を活かした木のぬくもりが心地いい空間は、東海道を歩く人たちの小休止にもぴったりのたたずまい。山梨さんは音楽にも明るく、時折店内で室内楽コンサートも開催しています。なんと、真空管アンプは山梨さんの手づくりなのだとか。すごい。
メニューは好きなお茶を選んで、フードとセットにできる仕組み。オススメは静岡茶や静岡抹茶をベースにした和スイーツです。
「茶楽パフェ」 静岡茶セット(税込1,080円)
抹茶アイスが、とっても濃厚でいて苦すぎず美味。アイスの下に詰めたもち米玄米の食感もクセになりそう。丁寧に淹れてくれたお茶も香り豊かでおいしい。
山梨 |
抹茶はずっと県外のものを使っていましたが、ここ最近は静岡抹茶の品質がみるみる向上していて。いまではすべて静岡産です。 |
今回は撮影できなかったのですが、もうひとつの看板スイーツとして「抹茶のチーズケーキ」があります。よくあるスイーツ製造用の抹茶パウダーではなく、抹茶そのものを使い、風味を損なわないよう低温でじっくり焼いているそう。そちらもぜひお試しあれ。
食事メニューもあるのでランチ利用もできる。写真は「サラダ風肉みそうどん(税込972円)」。
村松 |
話は変わるのですが、日本一の茶処としての静岡の地位も、年々危うくなっていると聞いたことがあって。 平地の茶面積が多い鹿児島と比べて、静岡は山が多いぶん、高齢化の著しい農家さんの生産が厳しくなっていると……。だからこそ、茶楽のような店に訪れた際、若者がもっとお茶に興味を抱いてくれるといいなといつも感じます。 |
山梨 |
そうですねえ……。この店を始めた当初、ペットボトルが普及していって、急須で淹れるお茶というのは生活圏内から離れていった時期でした。本当のお茶の味ってどんなものか。 それを知らない若い方々がお茶に親しむための入口として、茶楽が機能していてくれれば嬉しい。私どもは農家さんが頑張って生産したお茶を集めて、販売する立場なのでね。農家さんたちとともに、この業界を盛り上げていきたいです。 |
鎌倉時代から、味を飲み比べて遊ぶ文化まであったという日本茶。昨今、生産農家減少の話がたびたび聞かれるのは、ちょっぴり切ない気持ちです。
ペットボトルのお茶しか知らないなんて、もったいない。静岡の若者のみなさん、静岡を語るためにぜひ、本当のお茶の味を知ってほしいです。