焼津と歩むコーヒー専門店「DAISY COFFEE」
手回しロースターで追及するこだわりの味
真っ白な外観の前に手回しロースターが描かれた木の看板。壁の端っこに、ドアの脇にもイラスト発見。ここにも、こっちにもある!
店主の人懐っこいニッコリ笑顔につい「ふらり・・・」と足を踏み入れたそこは、焼津市の昭和通り交差点にある手焙煎珈琲豆・豆売り専門店でした。
知りたいことを追求し、焼津の町と一緒に楽しみ、ともに成長していくことを選んだ「DAISY COFFEE(デイジーコーヒー)」を紹介します。
「SYANTI」作、珈琲ロースターの看板が目印
先日公開した、焼津の鰹を市内で食べ歩くイベント「焼津・春の鰹三昧」の道中で見かけたDAISY COFFEEさん。
2017年4月にオープンしたばかりのお店です。白い壁に映える、手回しロースターの看板が目印のおしゃれな店構え。
「こんにちは!」と迎えてくれたのは、DAISY COFFEEの店主、松永さんと奥さんのリカさんです。
スギノ |
あれ? 以前、お店に寄ったときより、壁にイラストが増えているような・・・。 |
松永 |
でしょ? これは、「SYANTI※」の工藤誠さんがつくったデザインなんです。 |
※SYANTI:松永夫妻と熊本のデザイナー工藤誠さん3人で構成されるデザインチーム。工藤誠さんはDAISY COFFEEの専属デザイナーでもある。
店主の松永さんもかわいいイラストになって入り口でお出迎え。
DAISY COFFEEの看板にもSYANTIのデザインが描かれています。
松永 |
僕たちが「楽しい、かわいい」と思うものを、「お客さんはどう感じてくれるのかな?」っていう気持ちを持って、SYANTIでデザインした小物やイラストを散りばめています。熊本で工藤さんがつくったイラストは、僕がステンシル※でお店に描いてるんですよ。 |
※ステンシル:文字や模様を切り抜いた型紙に、染料や絵の具で色付けする技法のこと。
不思議な力に導かれ焼津へ出店
店内の小物やステンシルのかわいさなど、こだわりが伺える店内の奥には大きなカウンター。その内側には、珈琲豆を焙煎する手回しロースターがありました。ふわっと漂う珈琲の香りが心地よい空間です。
スギノ |
さっそくですが、焼津に珈琲豆のお店を出すことになった理由をお聞きしたいです。 |
リカ |
はじめは、静岡市方面にお店を出そうと考えていて、そっちで探していたんですよね。でも、なかなかいい物件が見つからず、そこで心が折れそうにもなっていたんですよ。 |
松永 |
やはり、商売をするなら人通りが多い場所がいいって考えていたんです。でも、ぜんぜんうまく物事が回らない。そんなときふと、「東京から戻ってきて、ずっと焼津にお世話になっていたのに、いざ店を出すってときに焼津から出ようとしてるってどうなの?」って思ったんです。 |
松永 |
焼津に目を向けたとたん、起業に向けて、なにか不思議な力が動いているんじゃないかと思うくらい、とんとん拍子にいろんなことが進みだしたんです。焼津市にも協力してもらい、いまも見守っていただいてます。
「僕たちが成長して力をつけていくことで恩返しする」なんて大きなことは言えないけど、いつか焼津の力になりたい。本当に感謝しているんですよ。 |
和から洋への路線変更
先ほどのお話のとおり、店主の松永さんは焼津の出身で、以前は東京に住んでいました。結婚を期に東京から焼津に戻ってきたそうです。そのころのお話もお聞きしました。
松永 |
東京で長く暮らしてこっちに戻って来たときは、お茶栽培の仕事をしていました。そのころは、自分で栽培したお茶をどうやったらおいしく淹れられるか、ってことを探求していましたね。
そして、お茶はおいしく淹れられるようになった。でも僕の思うかわいい茶器が見つからないことが不満だったんです。僕は和ではなくて、アメリカンテイストが好きなんです。 |
リカ |
もともと、珈琲をドリップして自宅で飲んでいたので、「とくにお茶の和にこだわらなくてもいいんじゃない?」ってことで珈琲にはまり、好きなことをどんどん探求していまに至る、というわけです。 |
DAISY COFFEEのこだわり「下処理」
「珈琲をどうやったらおいしく飲めるか?」という探求心のもと、試行錯誤を経てできあがったDAISY COFFEEの焙煎豆。この珈琲の特徴をお聞きしました。
松永 |
うちの珈琲の特徴をひと言でいうと「雑味の無い味」です。そのために焙煎も大事だけど、下処理に時間と手間をかけています。 |
スギノ |
下処理に時間をかけるのは、生豆からゴミや虫食い豆などを取り除く「ハンドピック」ということですか? |
リカ |
もちろんハンドピックも丁寧にしています。でも「下処理=ハンドピックだけ」と思われがちですが、うちの場合は、下処理のなかのひとつがハンドピックっていうだけで、ほかの工程もあるんです。 |
松永 |
下処理に関しては、「おいしい珈琲を飲むためにどうしたらいいかな」ってことを独自に考え、いろいろ試して行きついたので、本当にこだわってますよ。 |
日替わりで提供しているという、試飲の珈琲をいただきました。ブラックです。
リカ |
雑味がないというのを感じてもらうには、ブラックが一番わかりやすいので。どうですか? 雑味と苦みは違うんですよ。 |
スギノ |
はい。私は苦みが強い珈琲を好むので、なんとなくわかります。雑味、とは「えぐみ」のような感じですか? これはビターながらもスッキリしています。 |
松永 |
よく「珈琲豆本来のうま味を抽出した」という珈琲のキャッチフレーズを見かけませんか? それ、雑味がないっていうことなんです。ブラックが好きだから偉いなんて思ってはいないのですが、珈琲本来のおいしさを味わうには、やはりブラックが一番だと思います。 |
松永 |
たっぷりミルクを入れたり、砂糖を入れたりする珈琲を飲むのも、珈琲のおいしさを探す楽しみでもありますよね。でもブラックが苦手で、ミルクや砂糖で飲みやすくしているのなら、珈琲の雑味を消すために入れていた、ということかもしれませんよ。珈琲の本当の味を、ぜひ知ってもらいたいです。 |
知りたいことを追求する姿勢こそが「こだわり」である
松永夫妻のこだわりとは、「楽しいと思うこと知りたいと思うことを、とことん探求する!」という、ぶれない姿勢だと感じました。そして楽しむという思いが、店内の小物やステンシル内装、家でもおいしく飲める珈琲づくりに表れているのだと思います。
スギノ |
ちなみにカフェじゃなくて、「珈琲豆屋」というのも、なにかこだわりがあるのですか? |
松永 |
カフェでバリスタが入れた珈琲って、おいしいのは当たり前でしょ? でもうちの珈琲豆は、お客さんが家で入れてもおいしい珈琲に仕上げています。だから、お客さんが自分の好きなときに、好きな場所で、自由に楽しんでいただける。そういう珈琲を目指しています。 |
リカ |
日替わりで、珈琲の試飲をお出ししているので、まずは気軽にお店に入ってもらって何回か飲んで、お気に入りを見つけてもらうのがいいと思いますよ。
それと、これからはオリジナル雑貨や、リース、刺繍なども展開していこうと考えています。飲食店ではなく小売店。雑貨屋さんのようなイメージですね。 |
リカさんのおっしゃるように、少しずつ増えていくドライフラワーやステンシルを探すのもDAISY COFFEEの楽しみ方のひとつです。お客さんとのいろんな「楽しい」を一緒に過ごせるのが、このお店を始めてとても嬉しいのだそう。
リピーター客も増えているとのことですが、お二人のフレンドリーな人柄を考えると納得です。笑顔でお話してくれた松永夫妻に、ぜひみなさんも会いに行ってみてくださいね。