静岡文化芸術大学の学祭「碧風祭」は一味違う?
学生が創るアート&クリエイティブな2日間

  • posted.2016/11/30
  • 山口拓巳
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静岡文化芸術大学の学祭「碧風祭」は一味違う? 学生が創るアート&クリエイティブな2日間

11月を中心としたこの時期といえば、さまざまなイベントがあるシーズン。静岡県内でも大道芸ワールドカップをはじめとした多くの催しが開催されました。

そして、そんなイベントのなかでも特別な感じがするのが学祭。大学生たちのDIY感にあふれたお祭りは、個性的な出店やブースが立ち並び興味をそそりますよね。

今回、僕が訪れたのは静岡県浜松市中区にある静岡県立静岡文化芸術大学(通称:文芸大)。毎年開かれる学祭「碧風祭」は、アート&カルチャーを掲げる学校だけに面白いことをやっているそう・・・。

じつはかくいう僕自身、同校の卒業生。とはいえ、学生時代にはあまり学祭の出展ブースを回ったり、グルメを堪能したりといったことはありませんでした。

そこで、静岡からアートとクリエイティブの拠点として発信をする同校の学園祭をいろいろと回って取材。思ったことや感じたことをレポしていきます!

ちなみに準備期間中の様子は、mitecoライターの米田さんが記事にしてくれています。気になる方はぜひ、チェックしてみてください。

 若者の活気あふれる「碧風祭」へ

11月5日(土)、正午過ぎに浜松市へと到着。この日は天気もよく、日中はコートを着ていると少し汗ばむくらいの陽気でした。

さっそく、事前記事にも出てきた出会いの広場へと向かうために階段を登ります。この大学は少し入り組んだ構造をしていて、一番大きな芝生の広場は地上2階部分にあるんです。

そして、登りきったところですぐに聞き覚えのある声が。

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以前、mitecoでも紹介した同校に在学する鈴ちゃんがちょうどステージで演奏しているところでした。大きなステージで音響もきちんとしているからすごく映えます。野外ライブみたいですね。

hekifu_repo_10出会いの広場は出店でいっぱい! お昼どきで多くの人で賑わいます。

ここにはステージ以外にも、グルメを中心とした露店がたくさん出ています。大学生が趣向を凝らした数々の看板やメニューが掲げられていましたが、先に行きたいところがあったので少しあとで伺うことに。

周りを見渡してみると、歩く人の多くは文芸大の学生さんたちに見えますが、なかにはご年配の方やご家族連れの方もいて、地域にも開かれた学祭だという雰囲気を感じられます。

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ちなみに連絡通路はこのように一面張り紙だらけ。こうしたDIY感が大学祭の魅力のひとつだなぁと思います。

事前記事でも登場した場所へ

タマリバ

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「行きたいところ」というのは、米田さんの記事にも登場していたフェアトレードで仕入れた豆を使うコーヒーショップ『タマリバ』。行くとさっそく、おふたりが登場。

慣れた手つきでハンドドリップすると、まわりにコーヒーのいい香りが立ち込めてきます。ただフェアトレードというだけでなく、注文を受けてから1杯ずつドリップをしていくというこだわりで淹れられたコーヒー。そんなに詳しくないけど確かにおいしい!

当日に行けなかった方でも、毎週水曜日に「タマリバ」は学内で開店中。気になる方は足を運んでみてください。

アート解体新書

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さらに、そこからすぐの教室にはmitecoライターでもある、あんどうみをさんのブースが。natsukiiinさんもいらっしゃって、作品についてお話しをお伺いすることもできました。

※natsukiiin:浜松で活動するアーティストで、過去には同市にある鴨江アートセンターのアーティストレジデンスに加入していたこともある方。詳しくはこちらの記事で。

hekifu_repo_02抽象的な色彩で描かれるnatsukiiinさんの作品ですが、何が描かれているように見えますか・・・?

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こちらのブースは、展示された作品を「なにをイメージしたのか」「どんな道具を使ったかなのか」など、文字通り解体新書のごとく解説していくというもの。こうしたブースが学祭にあるのは文芸大ならでは。

フェアトレードもしかりですが、文化や芸術に向かってアプローチを試みる学生さんは、みなさんやる気と好奇心、そして行動力に満ち溢れていました。

 ワークショップや実演で魅力を伝える学生

さて、アート解体新書のブースを出て、キャンパスを歩いていると気になったのが「色織」と書かれた看板。ここでは、卓上織機を使って織られた商品を実際に織っているところを見せるだけでなく、販売もしていました。

hekifu_repo_16織っているのは「色織の会」に所属する生産造形学科3年の渡辺さん。

現在はほとんどが機械で生産される織物ですが、手作業で作るところを生で見たのは僕自身はじめて。

「テキスタイルとして習ったものを広める」という目的もあって展示をしている「色織の会」のみなさんですが、こうして身近な部分にアートやデザインを感じられるのはとても新鮮でした。

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色織の教室から出て、すぐのところにはワークショップ形式でプリントショップを行っている「print shop 〇△◇(カタチ)」というブースが。

ここは、実際にシルクスクリーンを体験しながらオリジナルの作品が作れるというスペース。僕が小さいころにはプリントごっこが流行しましたが、いまはそういうアナログ機器を見ること自体も減っていますよね。

hekifu_repo_18持ち上げられているのがシルクスクリーン。インクを通して任意の形を下の紙に印刷する技法です。

これを主催する「Enjoy Art Project」は、アートをより身近に感じてもらうためのワークショップを浜松を中心に開催するサークル。

以前には、写真の現像や活版といった内容でワークショップを開催しており、学外での活動も行っているみたいです。気になる方はTwitterもチェックしてみましょう。

さていずれの展示も、いまではあまり見かけなくなった技術や少し珍しい技法をあらためて提示するという主旨でした。どちらも普通に暮らしているのでは気づけない、気づかないもの。

それを大学生が再発見していくということは、すごく意義のあることだと感じます。説明を受けるなかには知らなかったこともたくさんあって、あらためて文化芸術の魅力に気づきました。

 学生が創るショートフィルム

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さまざまなブースや企画を回り、取材も最後の展示へ。訪れたのは、映画の上映会をしている「映画製作チームbf」のブース。同団体が実際に撮影・編集をした映画の上映を行っています。

と、聞くと「映画研究部ならほかの大学にもあるよね」と感じる方もいるかもしれません。しかし、じつは文芸大にはもともとこうした活動をしている団体はありませんでした。

僕自身も映画が好きで、映画の文化史について研究するゼミにも所属していたので、いまこのような団体が活動していることが本当に嬉しいです。

hekifu_repo_06上映作品はショートフィルムが3本。どれも手の込んだ編集と脚本で思わず見入ってしまいました。

そもそも浜松市、そして静岡県は映画にゆかりのある場所。現在でもたびたびロケ地として中田嶋砂丘や富士山麓が利用されていますし、浜松市の繁華街や静岡市の青葉公園では大ヒット映画が撮影されています。

さらに、日本映画史には欠かせない木下恵介監督が生まれ育ったのも浜松市。むしろ、なんでそこにある芸術や文化に関する学校に、こうした団体がなかったのかが不思議かもしれませんね。

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昨年まで、同団体のまとめ役だった生産造形4年生の炭谷さんに団体設立のきっかけをお伺いすると、「東京の映画製作に携わっていた方が去年になって浜松へと移住してきて、この団体が活動するようになった」とのこと。

その人の指導のもとで映画製作のいろはを学びつつ、かなり本格的な活動を展開しているようです。

次の作品作りに向けて早くも動き出しているとのことで、来年の碧風祭にも出展するんじゃないか、とお話ししていました。いち映画ファンとしてとても楽しみです。

 あらためて気づいたアート&クリエイティブの魅力

hekifu_repo_12碧風祭の風物詩でもある、バリ島の伝統芸能「ガムラン」を文芸大の学生が演奏している様子。口伝によってのみ継承され続ける海外の伝統音楽を日本で、日本人の学生が演奏するのはめちゃめちゃ貴重なこと!

 こうして早くも1年後にワクワクを募らせながら、取材を終えた碧風祭。学生時代の目線とは違ったところから学祭を楽しんでみると、これまでに知らなかったことがたくさんありました。

学生時代の自分はちょっと損していたなぁと思うとともに、社会人になったからこそ感じられる文化芸術の魅力もあったように思います。

そして、また来年、静岡県からどんどんクリエイティブを発信していく学校として取材に訪れてみたいです!

これまで、アートに触れていなかった人や「ちょっと敷居が高い」と感じていた人は、こうした学生の活動に注目してみるのも面白いかもしれませんよ。静岡文化芸術大学は、社会人聴講が可能な講義も開講されていますから、気になる方はチェックしてみてください。

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生気みなぎる大学生からエネルギーを発信!

静岡文化芸術大学

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