開幕迫る「ふじのくに⇄せかい演劇祭」って？
浜松出身のSPAC俳優に見どころを聞いてきた

mitecoライターのIVYです。

まず質問なんですけど、「ふじのくに⇄せかい演劇祭」ってご存じですか？

毎年春に開催されているイベントで、静岡市の街中でおこなわれたりしているんですけど。

似ているけど違う、それは大道芸ワールドカップ。しかもそれは秋。

ふじのくに⇄せかい演劇祭は毎年ゴールデンウィークにSPACが開催していて……。

SPAC『マハーバーラタ ～ナラ王の冒険～』ⓒ日置真光

……SPACは知ってますよね？

分かりました。そこから説明します。

SPACとは「Shizuoka Performing Arts Center」の頭文字をとったもので、正式名称は静岡県舞台芸術センター。演劇を中心にさまざまな活動をしている県立の演劇集団です。これだけだと魅力が1ミリも伝わらない気がしますが……。

まじでSPACすごいんです。「静岡なんにもな～い」とか言う静岡県民はSPACを誇ってください。静岡といえばお茶、みかん、SPAC。海外では「静岡といえばSPAC」と知っている人もいるんですって。

で、そんなSPACが主催する、ふじのくに⇄せかい演劇祭。

ひと言で表すと”いろんな演劇が上演されるイベント“ですが、ただの演劇じゃありません。SPACが世界中から選び抜いた最先端のものばかり。

それが静岡で観られて、期間中は街中までもが劇場と化します。

静岡にいながら世界の演劇が楽しめる！

ふじのくに⇄せかい演劇祭公式HP

長かったけど以上が導入。以下から本題です。ふじのくに⇄せかい演劇祭2018を紹介させてください。

……でも、じつを言うと去年初めて演劇祭に参加したニワカ演劇ファンなので詳しくないです。

なので、SPACの方に取材していろいろ話を聞きだそうと、今回の企画をもちかけたところ、『マハーバーラタ ～ナラ王の冒険～』※に出演される石井萠水（いしいもえみ）さんにお話をお伺いする機会をいただきました。※ふじのくに⇄せかい演劇祭でSPACが公演する演目

そんなわけで、

ふじのくに⇄せかい演劇祭についてSPAC俳優の石井萠水さんにお話を聞いてきた！

SPAC俳優 石井萠水さん

ここからは、SPAC俳優・石井さんに聞いた『マハーバーラタ ～ナラ王の冒険～』のお話をお届けします。

目、耳、全身で非日常を感じる物語

まずは演劇祭でSPACが上演する『マハーバーラタ ～ナラ王の冒険～』の物語を簡単に。

「マハーバーラタ」というのはインドに古くから伝わる長いお話です。SPACの演劇作品『マハーバーラタ ～ナラ王の冒険～』はそのなかの「ナラ王物語」をもとにしています。

絶世の美女であるダマヤンティ姫と、勇敢で力のあるナラ王が結婚するところから話はスタート。結婚して幸せな2人、しかし2人の仲をよく思わない悪魔によってナラ王は失脚してしまいます。さらに2人は離ればなれに。

離ればなれになった王は姫を、姫は王を探しあいます。2人は神様や人々に助けられながら旅をして、最後には再会できるのか？？ それは観てのお楽しみです。

吉本	インドの古い話なので難しいのかなと思ったのですけど、わかりやすそうですね。
石井	はい、わかりやすいですよ。小さいお子さんも物語を理解して楽しんでいますので、みなさん楽しんでいただけると思います。
吉本	今回の役の説明をお願いします。
石井	じつは出演が決まってるだけで役はまだ言われてないんですよ。SPACからの出演オファーは基本的に「あなたはこの役です！」と言われることはありません。   今までの上演では、ナラ王の王妃であるダマヤンティ姫の従妹役、7歳の女の子を演じました。わたしアラサーですけど（笑）子供の役をやることが多いんですよね。

SPAC秋→春シーズン 2017-2018『病は気から』で少女役を演じる石井萠水さん ⓒ平尾正志

吉本	舞台といえば、『マハーバーラタ』の舞台セットもかなり特殊ですよね。駿府城公園の特設舞台で行われますが形がリング状。とても珍しい舞台ですよね。
石井	お客様を360度、舞台がぐるりと囲むんです。マハーバーラタはインドの古いお話ですけど、舞台は「その物語が平安時代の日本に伝わっていたら」という構想で作られています。   リング状の舞台に平安風の衣装でお芝居が行われる。すると演劇が絵巻物みたいに見えてくるんですよ。   また、舞台の背景には公園の緑と市街地のビルが見えるんですよね。街の風景を背に物語が繰り広げられるのも、この劇の魅力のひとつだと思います。

駿府城公園の特設ステージ（2015年『マハーバーラタ』ⓒ中尾栄治）

吉本	屋外ならではですね。
石井	日常のなかに非日常を感じられて、それがとても好きなんですよね。駿府城公園の中で稽古をしていると車の音が聞こえたり、散歩の方が寄ってきたりして。日常を強く意識させられるんです。   日常の音や空気、そして光のなかに『マハーバーラタ』という非日常の物語が立ち上がる。駿府城という日常のなかに演劇という非日常がある。世界が変わって見える感じも魅力です。
吉本	HPなどに載っている劇の説明に「祝祭音楽劇」とありますが、音楽も魅力のひとつなのですか。
石井	その通りです。アフリカの打楽器から学校に置いてある身近な鍵盤楽器まで、主に打楽器を用いて全編を俳優の生演奏でお送りします。なので、耳でも楽しめますよ。珍しい楽器や俳優でもある演奏者にも注目してください。

マハーバーラタをもっと楽しむには！

吉本	劇をさらに楽しむポイントなどはありますか？
石井	この劇にはたくさんの登場人物がいます。王様役とお姫様役の人はこの役だけに専念しています。が、ほかの俳優は基本的に複数の役をこなします。   一応、顔などは隠すので同じ人が演じているとはわからないですけどね。舞台上を走り回るのはもちろん、次の場面で反対側から出る場合などは舞台裏も走り回ったりしています。
吉本	大変そうですね。役柄によって衣装とかって変わらないんですか？
石井	変わります（笑）ベースの衣装みたいなものがあって、そこから羽織ったり脱いだりします。演技をしたあと飛び降りるように舞台を降りて急いで着替え、小道具もリレーのようにして渡して、まるで運動会（笑）

360度の大パノラマ舞台。俳優さんたちによる息の合った生演奏にも注目！

吉本	舞台裏はあわただしいんですね（笑）当日いらっしゃるお客さんに、なにかアドバイスはありますか。
石井	雨でも公演をおこないます。そして夜間はかなり寒くなるので気をつけてください。春の格好だけだと寒いですよ。演出の宮城聰※が雨男なので、天気はきちんとチェックするように（笑）※マハーバーラタの演出を担当されている方です。またSPACの芸術総監督でもあります。
吉本	では最後に。若い方ってあまり演劇を観ないと思うんですけど、そういう方たちになにかメッセージはありますか？
石井	映画でもテレビでも、なんでも時間のあるうちにたくさん観ていただきたいと思っています。わたしも若いころ、人間関係がうまくいかないときは好きなアーティストのライブに行ったり、お芝居観に行ったりしてエネルギーを感じ、元気をもらったりしました。   演劇をやる側になってわかったんですけど、エネルギーを届けるにはものすごく体力を使います。それは「お客さんに届け！」と思いながらやっているからだと思うんです。なので、ぜひ受けとりに来てください。

インタビューの場所は芸術劇場2階「カフェシンデレラ」。劇場での公演前後にオープンするカフェで、スタッフにはなんと俳優さんもいらっしゃいます。

石井萠水さんに『マハーバーラタ ～ナラ王の冒険～』をはじめ、舞台の魅力をたっぷりお伺いすることができました。

とここで、非常に申し訳ない。きちんとお話しは伺えたのですが、皆さんに伝えなきゃならないことが…

じつは、すでに演劇祭では完売している演目もあるんです。

ごめんなさい。もっと早く動いていればよかった。8演目中3演目が完売です。ただ、石井さんが出演する『マハーバーラタ』などの座席数が多い演目はまだ余裕があるのでご安心を。予約するならお早めに！！

チケット関連の話になったので、もうひとつおトクな情報を。演劇祭にはチケットがなくても観られるものがあります。その名も「ストレンジシード」。

2017年ストレンジシードより、静岡市役所前での「短距離男道ミサイル」のパフォーマンス。

ストレンジシードでは、日本各地のアーティストたちが静岡市の街中でパフォーマンスをおこないます。大道芸ワールドカップの演劇版、と言えばわかりやすいかと。

もちろん、無料。

「無料ってことはその辺の素人が勝手に参加してやってるのでしょ」と思うもしれませんが違いますよ。普段の公演じゃチケットがとれないようなアーティストや劇団も参加していて、ストレンジシードだけのために遠方から観に来る人もいるくらい質が高いんです。

それが無料で観られる。無料で。しかも、静岡の街中や駿府城公園で。

2017年、駿府城公園でパフォーマンスする「少年王者館」。

ちなみにストレンジシードに出演するおすすめアーティストを石井さんに伺ったところ、とくに「少年王者館」「ままごと」との回答がありました。※お答えに相当悩まれて、「全部おすすめなんだけど！」という感じがヒシヒシと伝わってきたので「とくに」と付けました。

おすすめアーティストの回答に相当悩んでいる石井さん

ままごと『わが星』より ⓒHideaki Hamada

以上、十分に紹介しきれていないし、石井さんのお話に関しても本当はもっと使いたい部分があったんだけど……。

演劇祭の魅力が少しでも伝わり、SPACや演劇祭に興味を持ってもらえたら幸いです。

当日の駿府城公園の会場には、軽食などを取りそろえた「Festival Garden」もあるのでふらっと立ち寄ってお祭りの雰囲気を味わうだけでも楽しいはず！

地ビールや地元焙煎の珈琲、軽食なども取りそろえた演劇祭のコミュニティスペース「Festival Garden」

そんなわけで、

ふじのくに⇄せかい演劇祭2018に行きませんか？

興味持った人のためにSPACや演劇祭についてのリンクを張っておきます。

ふじのくに⇄せかい演劇祭2018各種リンク

・2018演劇祭特設サイト
・ストレンジシード公式HP
・ストレンジシードTwitter
・ストレンジシードFacebook
・SPAC公式HP
・SPAC公式Facebook
・SPAC公式Youtube

静岡市街中で出会えるアート・パフォーマー