「一富士二鷹三茄子」は静岡で誕生した!?
徳川家康と駿河国にまつわるその由来
明けましておめでとうございます。編集部の山口です。
お正月は実家に帰りまして、おせちやらおもちやらをたらふく食べつつビールも飲んだので、若干胃もたれしています。顔つきが悪いのは元々です。
mitecoのお正月休みも明け、一昨日より再始動! 今年も静岡の魅力をもっと発信できるよう頑張っていきます。
さて、話が変わりますがこの時期といえば、なにかにつけ「初○○」「○○初め」と言ってしまう、思ってしまうことはありませんか? テレビやチラシを見ていても「初売りセール!」なんて言葉が飛び交っていますよね。ほかにも書初め、初詣でなど古くから慣習となっているようなものも多いです。
そして、そんななかでも身内で大盛り上がりなのが「初夢」。
その年の吉兆を占う初夢は気にする方も多いはず。ちなみに僕は「吉松編集長と伝説の猪鍋を作るために猪を狩りに富士山へ向かう」という、完全に意味のわからない夢を見ました。
・・・で、そんな初夢に出てくると縁起がいいもの、として知られているのが、みなさんご存じ「一富士二鷹三茄子」です。
でも、なんでこの3つが初夢の縁起のよさにつながってくるのか?と思って調べてみると、じつは「静岡という土地が深く関わっているかもしれないこと」がわかりました。
諸説ある初夢の「一富士二鷹三茄子」
一富士二鷹三茄子が縁起物だと言われるようになったのは、江戸時代に入ってからだとされています。とはいえ、その由来には諸説あり、どれも確実視されているわけではありません。
しかしなかでも有力な説があり、それは「徳川家康が愛したもの」あるいは「徳川家康の住んだ駿河国(現在の静岡県中東部)で高かったもの」などといった、徳川家康にちなんだものだということです。
いずれの説であっても天下をとった家康公の好物や、氏にまつわるエピソードから縁起物を選ぶことで、その力にあやかろうというわけですね。
当時の徳川家康といえば、亡くなってから「東照大権現」と呼ばれ神社に祀られていたうえに、相当な人気だったようです。
一富士二鷹三茄子の由来
富士は日本一の山と童謡でも歌われていますね。由来にも関係する三保半島の世界遺産、三保の松原から撮影しました。
前項で触れた一富士二鷹三茄子の由来には、以下のような説がささやかれています。
1.徳川家康が愛したもの説
一富士二鷹三茄子は徳川家康の好物を種類別に、「景色は富士山、趣味は鷹狩※、食べ物は茄子」と表したものだという説です。
天下人である徳川家康の好きなものを初夢に見てあやかり、出世を占おうという風習が元になっているのだとか。
※鷹狩:鷹を使って狩りをすること。鷹がよければより、質のよい獲物が獲れることから良質な鷹が貴重だった。
※画像提供:掛川花鳥園
ちなみに鷹は「空高く飛翔する」鳥というところで、出世にもつながっているとのこと。初夢で鷹を見たら、その年は飛躍するかも・・・!?
2.徳川家康の住む駿河の名物説
駿河国で有名なものを並べ、それらを夢に見るのは家康に近づく、といったニュアンスで広まったようです。
富士山はいうまでもありませんが、ほかのふたつが駿河国に由来するというのは少しわかりづらいですよね。
二鷹は「富士山のふもとから出てくる鷹は鷹狩で活躍する『良種』」ということが江戸時代で有名だったから。
三茄子は「駿河国はほかの国(県)に先駆けて茄子が採れる名産地」だったからだそうです。
静岡は古くから温暖で、作物を作るのに適した環境だったことがわかりますね。
3.駿河で「高いもの」を並べたもの説
少しユニークですがよく見かけたのがこの説。駿河国で高いものを並べたという説で、一番は駿河どころか日本でもっとも高い山である「富士山」。
そして、2番にはその近くにある「愛鷹山」。箱根から見る愛鷹山は絶景地としても知られていますよね。
実際には静岡県には愛鷹山よりも高い山はいくつかあるのですが、景色や知名度も含めてこう呼ばれたのかもしれません。
となると3番目も山になるのが普通じゃ・・・。と考える方も多いですよね。では、茄子にちなんだ山があるのか、というとありません。
3番目は駿河で採れた初物の茄子の価格が、めちゃめちゃ高かったからという理由で「茄子」が選ばれているんです。
つまり、これって江戸時代のギャグや言葉遊びで、今でいうところの「三段落ち」が使われているわけですね。
日本人の笑いの感覚は、江戸時代から通じるがあると思うと、興味深いなぁと感じます。
以前に久能山東照宮を取材した際に撮影した茄子。家康公の好物ということで栽培をしていたようです。
ちなみに徳川家康が好きだった茄子は三保半島※、折戸地区の特産品である「折戸なす」です。この珍しい形をしたなすは、収穫が早くおいしいことでも知られています。
・・・でも、さすがに将軍。高価な折戸なすのなかでも際立って高い「初物」を好んだというエピソードは、当時のVIPぷり(将軍だから当たり前ですが)がうかがえますね。
※三保半島:現在の清水区で東海大学海洋博物館や三保の松原、清水エスパルスの練習グラウンドが有名。
初夢の縁起物「一富士二鷹三茄子」を実際に見た楽しむのも静岡ならでは!
一富士二鷹三茄子の由来はこれ以外にもいくつかありますが、多くの説に静岡や徳川家康が関係しているという事実には驚き。意外なところで自分の住んでいる場所が出てくると嬉しく感じるものです。
ちなみにいまでも「一富士二鷹三茄子」は、すべて静岡で楽しむことができます。
富士山は静岡県内のいたるところから観られますが、鷹については掛川市の「掛川花鳥園」でバードショーの際にお目にかかることが可能。雄々しく翼を広げる鷹は迫力満点です!
さらに、茄子は・・・。そもそも、静岡県外でもスーパーでも年中買うことができますが、どうせなら初夢の由来である「折戸なす」を食べたいところ。
じつは、明治に一度栽培が途絶えてしまったのが、近年になって折戸地区での栽培が復活したそうです! ただ、まだ生産数は限られており地産地消される特産品であまり出回らないとのこと。
収穫は5月中旬ごろから始まるということで、もし見かけた方はぜひ独特な形と味を堪能し見てください。僕も調べてからかなり興味がわいてきましたので、今年はぜひ食べてみたいです。
それではみなさん、今年もmitecoともどもよろしくお願いいたします!!