パンクロックドリームは暮らしのなかに
静岡のパンクバンド「Zん」Murataheadはなにを歌う?
どうもどうも。miteco読者の皆さま、ご無沙汰しております。
「東京と静岡を行ったり来たり。なにやってんだかぁ」でお馴染みのmitecoゲストライター、ロッキーです。
僕の友達はバンドマンやDJ、RAPPERが多い。そんな音楽仲間は多い僕だけど、静岡で「パンクロック」をやってる友達は少ないように思う。
静岡出身のパンクロックバンド「Zん(ゼットン)」というバンドのMuratahead。彼は僕と同い年で、バンドを通じて知り合った友達です。そのZんが、3月末に初のフルアルバム「Escape From Not Tokyo」をリリースしました。
3月27日に発売した「Escape From Not Tokyo」のCDジャケット
ロッキー | Zんはさ、メッセージ性のあるバンドだから自分の気持ちをインタビューとかで残してもいいと思うんだよね。ムラちゃん(Muratahead)。 |
Muratahead | うちらみたいなバンドを取り扱ってくれる媒体がねえからなぁ。 |
ロッキー | ほいじゃあ俺やるよ! |
Muratahead | なんか緊張しちゃうな〜! |
という流れでこのインタビューなのか対談なのか・・・は実現しました。快く本企画を快諾してくれた、心が駿河湾のように広いmiteco編集部に感謝とリスペクトを。
そしてここまで読んでくれた読者の皆さまには、この先も読んでいただけると幸いです。
静岡にいるからこそ歌える、まだ歌われていない歌
Zん – American Empire Ends
ロッキー | じゃあ〜まず、Zんについて。バンドを始めたきっかけを教えて欲しいな。 |
Muratahead | 俺はもともと激しい音楽、メタルとかパンクとかがめちゃめちゃ好きでさ。バンドをやるなんてことは考えたことなかったんだけど、大学時代にカメちゃんと峰くん(Zんの創設メンバー)とよく帰省のたびに遊んでて。
「あ〜この人たちとバンドやったら楽しいだろうな」と思って2013年からZんを始めた。 |
ロッキー | 今みたいにツアーに出たり、コンスタントに活動するようになったのはいつから? |
Muratahead | 2014年の秋に静岡に戻ってきたときから県内でコンスタントにやるようになって、そこからやまちゃん(ロッキー)たち「THE WEMMER」とよく一緒にやるようになったよね。去年から今のメンバーになって、県外へツアーに行くようにもなったよ。
バンドをやってると自分が知らなかった音楽と出会えるから、リスナーとしてもさらに充実した感じがあったね。 |
ロッキー | ムラちゃんって、リスナーとしての意識が強いのがすごく伝わるよね。つねに新譜をチェックしてるし、パンクロックのことなら国内外問わずいろいろ知ってるし。
「THE GUAYS※」のキャプテンにも、打ち上げで「ムラちゃん、詳しすぎ。人間ウィキペディアやん!」って言われてたよね(笑) |
Muratahead | いやいや、まだまだ知らないことばっかりだよ。 |
※THE GUAYS(ザ・グアイズ):2010年結成の4人組パンクロックバンド。
ロッキー | 次に、リリースしたばかりのZんのアルバムについて聞かせて。今回の「Escape From Not Tokyo」は、どんな経緯でこのタイトルになったのかな? |
Muratahead | 「This is Boston Not L.A.」っていうボストンのハードコアパンクを集めたコンピレーションアルバムがあって。それはロサンゼルスのバンドに対する反発や差別化を「俺たちはボストンのバンドだ!」って掲げたコンピだったんだけど、俺らは別に東京に対する劣等感はまったくなくて。 |
ロッキー | なるほど。「東京コノヤロー!」みたいなアルバムなのかと思って、今東京に住んでるからソワソワしてたよ。 |
Muratahead | 静岡って名古屋と東京に挟まれてるし、自分たちの世代のカルチャーで「静岡といえばこれ!」みたいなのあんまりないじゃん? だから今回、静岡を表す言葉として「Not Tokyo=東京じゃない場所」ってつけたんだよね。東京じゃないからこそ歌える歌ってあるなって。 |
ロッキー | たしかに。静岡が抱える問題や警鐘を鳴らす曲が今回のアルバムにはたくさん入っているよね。 |
Zん – 第五福竜丸のバラード
Zん – 浜岡Warning
Muratahead | 『第五福竜丸のバラード』と『浜岡Warning』の2曲に関しては、完全に東日本大震災以降の日本の動きを見て。あのとき原発って怖いなっていう気持ちが大きくなって、自分が抱くNOの気持ちとか、恐怖心、生まれた感情を歌いたいなって思った。 |
ロッキー | Zんっていう20代のバンドが、自分の暮らす静岡で浜岡原発に対して歌っていることってすごく大事だと思うよ。原発が身近にあるのに危惧してたり、考えてる人どれだけいるんだろうって思う。静岡では発信すること自体が、少しタブーにすらなってる気もする。 |
Muratahead | パンクもそうだしメタルもそうなんだけど、音もハードだし、言ってる内容もハードなんだよね。タブーに触れるみたいな。自分が聞いてきたパンクは自分の精神や社会問題を、メタルは宗教や歴史をメッセージとしてたの。そもそもロックの魅力のひとつはタブーに触れることだと思っていて、ドキッとしたり、なにか気づかされたりするんだよね。
でもたとえば、The Clash※の『White Riot※』を俺が歌っても、やっぱりピンとこないんだよ。だから日本に今生活している自分にフィットする歌を歌ってる。まだまだ歌われてないことがたくさんあると思うんだよね。 |
※The Clash : 1976年〜1986年にかけて活動した、イギリスのパンクロックバンド。
※White Riot : 1977年リリース。The Clashのファーストシングル。
バンドってさ、飯食ってうんこして寝るのと一緒じゃんね
ロッキー | NOT TOKYOからの脱出。さぁじゃあ俺たちこれからどうしようかね。 |
Muratahead | 静岡で普通に生活している人たちからするとさ、Mステとか紅白に出ることがバンド活動してるってことなんだよね。 |
ロッキー | うんうん。 |
Muratahead | こないだ、酒場で初対面の女性と世間話をしててさ、「自分がバンドをやってる」なんて話になったときに「え! その歳でまだ夢追いかけてるの!」って言われちゃったんだよね(爆笑) |
ロッキー | 世間が思う「バンドやってる」のイメージとはズレがあるよね。 |
Muratahead | それを聞いたときに、静岡に暮らしている一般の人の感覚と、俺らがやってること(バンド活動)って遠く離れちゃってるなって感覚がした。
俺らはさ、バンドをやってることが自己表現のひとつで。いろんな音楽聞いて、生活しているなかで感じたことを曲にするってさ、「飯食ってうんこして寝る」みたいなことじゃん? |
ロッキー | たしかに。ルーティーンだし、生活の一部だね。 |
Muratahead | 音楽が普通に好きなら誰でもできるって知ってもらいたいよね。そしたらもっとバンド増えるんじゃないかな。夢はあるぜって思う。 |
パンクロックドリームは暮らしのなかに
ロッキー | 夢がないって言われちゃったけど、「パンクロックドリーム」って言葉、CDのライナーノーツ(解説文)に書いてあったよね。 |
Muratahead | そもそもパンクロックに、ドリームとかって概念はないじゃんね。 |
ロッキー | NO FUTUREだもんね。 |
Muratahead | でも、こないだ静岡のバンド「and more」と「Stupid Babies Go Mad」と一緒にライブやれたりさ、県外にもバンドの友達ができてツアーに回れたりさ。それもひとつのパンクロックドリームだと思ってる。あと、バンドをやっているとどんどん好きなものが近くなってくる。 |
ロッキー | 好きなものが近くなってくるか。すごくいいね。 |
Muratahead | and moreのモリカワさんに知らないバンド教えてもらって、Stupid Babies Go MadのimaさんがThe Damned※のカッコよさを教えてくれて。憧れている人と話して、自分の世界が広がっていくのもパンクロックドリームって言うのかな。 |
ロッキー | 普段自分が生活している場所とか、誰かが生活している場所に行ってライブをして。パンクロックドリームって特別なものじゃなくて、日常のなかにありそうだよね。 |
Muratahead | そうだね。バンド活動をしてなかったら、住んでる場所や年齢問わず、普通では知り合えなかった人たちと知り合えたからね。こうやって今話しているのもそう。
遊びに行くところや、ご飯食べに行くところだって、バンドをやっているなかで出会ったんだよ。これからそれがさらにどんどん広がっていくとなると思うとワクワクする。 |
ロッキー | 俺ら27歳になって、こういう夢の話とかできるのすごくいいな。 |
Muratahead | やっぱそれがあるから、仕事もがんばれるしさ。バンドは今を生き抜く糧になってるよ。 |
※ The Damned : 1976年結成、イギリスのパンクロックバンド。
むらちゃん(Muratahead) とは5年前に、静岡で同年代の仲間がみんなバンドをやめて、まわりに友達がいないときに知り合った。今日みたいな音楽の話をツアー中の車内、七間町の道端とか、居酒屋とかファミレスとかサウナとかでいつも話している。
そんな友達が今年リリースしたアルバム「Escape From Not Tokyo」は、東京で修行している僕に勇気とパワーを与えてくれた。同年代の悩み、楽しみ、未来への警鐘が激しい楽曲とスピード感であっという間に駆け抜ける。
パンクロックバンドらしい最高のアルバムだった。静岡から焼津に行くまでに3、4周聞けたよ。ありがとう。
Zんの情報
- HP:https://zetton-band.tumblr.com/
- Twiter:https://twitter.com/Zettonband
- Facebook:https://www.facebook.com/Zettonband/
- Instagram:https://www.instagram.com/zettonband/
【Escape From Not Tokyo Tour】
2019年5月26日(日) Wall 初台
Erase The Period企画 「或る狂騒 vol.7」
OPEN 15:00 / ADV ¥1,500 (+1drink)
2019年6月29日(土) Freakyshow
Punkpalast -Escape From Not Tokyo Tour Final-
OPEN 20:00 / ADV ¥2,000 (+1drink)