
日本でも最近、「アカウントベースドマーケティング(ABM)」という手法が話題になっています。
アカウントベースドマーケティングとは、営業アプローチする対象として、ある法人企業(アカウント)がポテンシャルのある対象かどうかを見極め、有望なターゲット企業になり得るリード顧客に対して、マーケティングを実施する手法のことを意味します。
企業の8割の売上は、2割の大口顧客がもたらすという「パレートの法則」は有名ですが、それだけ企業はどのリード顧客に優先的にアプローチするかが重要なのです。
・・・実は、アカウントとなる企業をターゲットにマーケティングを行うという概念自体は、新しいものではありません。
しかし、環境の変化によってこの手法が今、もう一度注目をされつつあります。
そこで本稿では、この「古くて新しいマーケティング手法」である、アカウントベースドマーケティングを解説していきます。
繰り返しますが、アカウントベースドマーケティング(ABM)は新しい概念ではありません。それが今になってまた注目され始めているのは「環境の変化」が要因です。
日本では、ここ数年間で営業支援システム(SFA)やマーケティングオートメーション(MA)ツールが普及してきました。
これらのツールにより、さまざまなチャネルでのマーケティング活動が一元管理できるようになりました。
さらに、従来でも企業をベースにダイレクトマーケティングを行うという手法は採用されていましたが、テクノロジーの進化により、一元管理したリード顧客に対してリードナーチャリングが円滑にできるようになりました。
このことは、今一度AMBをB to Bデジタルマーケティングの手法として再定義させ、話題になっている要因の一つだと考えられます。
・・・このような環境の変化があり、ABMという概念にもう一度注目が集まるようになりました。
アメリカを中心とする海外でも、ABMの概念が受け入れられていて、様々なツールが存在しますが、ここでは一例としてMarketoをご紹介したいと思います。
マーケティングツールを開発する米国企業のMarketoは昨年6月、同社が展開するMAツールの「Marketo」にABMに必要な機能を標準搭載する「Marketo Account-Based Marketing」を発表しました。
Marketo ABMは以下の特徴があります。
まず1つ目に、パーソナライズされた方法で最も重要な顧客にターゲットを絞る機能です。Marketo ABMではアカウントとリードスコアリングを活用し、パーソナライズされたキャンペーンを通じて、適切な顧客を絞り込むことができます。
また、ターゲット内の重要な意志決定者と深い関係を構築することにも優れています。Marketo ABMには「オーディエンスハブ」という機能があり、そこで顧客の行動の詳細を取得することができます。
それを活用すれば、適切なタイミングで高度にパーソナライズされたメッセージを提供することができるのです。
Marketo ABMには高度なアナリティクスツールも搭載されています。これにより、アカウントチームがマルチチャネルエンゲージメント、パイプライン、収益などの主要指標にわたってABM活動の影響を測定することが可能になります。
Marketoは昨年から日本国内にも進出しており、これまでに資産管理ツールの「マネーフォワード」や名刺管理ツールの「Sansan」などを顧客として獲得しているそうです。
本稿では、ABMとは何か、そして利用できるツールは何かを説明してきました。それでは、アカウントベースドマーケティングを導入する意義はどこにあるのでしょうか?
米国でABMを提唱するDemandbaseは、インフォグラフィックを利用してABMについて以下のように説明しています。
1.Web来訪者の82%はポテンシャルカスタマーではない。
2.Web来訪者の直帰率は60%
3.マーケティングが提供するリード顧客の50%は営業に無視されてしまう。
出典:Demandbase“The Rise of Account-Based Marketing”
これは、ターゲットとなるポテンシャルを秘めた企業(アカウント)が、Web来訪者の一部でしかないことや、その企業がリード顧客となり、最終的に成約に結びつく可能性が低いことを表しています。
それゆえ、上位数パーセントの顧客企業が売上全体の8割以上を占めるという企業では、ターゲットを絞り込んで集中的に攻勢をかける必要があります。
その顧客へ投入するリソースが少しばかり多くなってしまったとしても、成功すれば大きなリターンが得られるからです。
だからこそ、有望なアカウントを絞り込み、そこに重点的にマーケティング活動を行う必要があり、ABMを導入する意義があります。
マーケッターの皆さんも、自分たちのビジネスはどのような特性をもつのかを上手く判断し、その上でABMを導入するべきかを考えてみましょう。
文/ピート・C・ドハーティ
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